利用規約のQ&A

更新日:2023年5月18日

K1利用規約と同意

K1-1利用規約とは、なんですか?

利用規約は、そのWebサイトのルールです。そして、その利用規約に同意*1した人との間では、Webサイトの運営者とユーザーそれぞれを拘束する契約となります。保険契約でいえば約款にあたるものと考えるとイメージしやすいと思います。「免責事項」や「個人情報の取り扱いの説明」についても同様に考えられます。

*1
利用規約を活かすには、「同意」の手続きが必要です。「利用規約への同意」の取得方法の一般的なものとしては、ユーザー登録フォームで利用規約を表示し、「利用規約に同意します」というチェックボックスにチェックしないとユーザー登録できないようにする仕組みが挙げられます。

K1-2ユーザーには、利用規約にどうやって「同意」してもらえば良いのですか?

ユーザーに「同意します」のチェックボックスにチェックさせたからといって、大丈夫とは限りません。チェックボックスをクリックすることは、契約書に署名したり印鑑を押すことに比べ、気軽に行ってしまう行為であることは否めません。このため、後にトラブルになった際に、「利用規約は読んでなかった」「内容を理解していなかった」「同意したつもりはなかった」などと主張されてしまう可能性があります。

このため、利用規約への同意を取得する際には、ユーザーに利用規約をきちんと読んでもらい、これに同意した人だけがサービスを利用できるような仕組みにしておくことが重要です。

例えば、規約のリンクを貼ってあるだけよりも、規約全文をスクロールしなければチェックボックスに辿りつかないようにしてある方が、「読んでなかった」と主張されるリスクは減ります。

また、利用規約自体も、長大で難解なものよりも、要点をまとめたコンパクトなもので、平易な文章で記載されている方が「理解していなかった」と主張されるリスクは減少します。

この他、オプトアウト(同意しない人がクリックする)方式で同意を取得する場合よりも、オプトイン(同意する人がクリックする)方式で同意を取得した方が、「同意したつもりはなかった」と主張されるリスクは減少します。

K1-3一度定めた利用規約を変更することはできますか?
また、利用規約を変更するには、どのような手続きをとる必要がありますか?

利用規約を変更することはできますが、本来、改めて変更後の利用規約について同意を取得しなければ、変更後の利用規約はユーザーとの間での契約内容にはなりません。

もっとも、変更のたびに同意を要求するのは現実的ではないため、民法548条の4で、明示の同意がなくとも利用規約の変更が認められる条件を定めています。

まず、ユーザーに有利になるように利用規約を変更することは可能です(548条の4第1項1号)。具体的には、利用料金を減額することや、免責条項で定めた運営会社の賠償上限を引き上げる(撤廃する)ことなどが考えられます。

ユーザーに不利になる契約条件の変更であっても、必要性、相当性、合理性等を備えている場合には、利用契約の変更により処理することができます(同項2号)。具体的には、ユーザーの有害な行為を禁止するために禁止事項を追加することなどが考えられます。

いずれの場合でも、いつから、どのように利用規約が変更するかについて、予めユーザーに周知させなければなりません(同条2項)。特に、ユーザーに不利な規約変更の場合には、事前に周知しなければ無効となってしまいます(同条3項)。

K1-4利用規約は、誰のために作るのですか?

利用規約は、第一には、Webサイトの運営者のために作られます。Webサイトは、そのサービスの内容によっては、ユーザーや第三者との間でトラブルを生じることがあります。このようなトラブルが発生したときに、それを解決するルールとなるのが利用規約なのです。

そして、利用規約は、Webサイトの運営者が一方的に作成できるものなので(有効性に問題が生じうることについては後で説明します)、運営者に有利なルールを作ることができます。トラブルを回避したり、トラブルが発生した場合にもできるだけ低いコストで解決できるように、運営者は利用規約を作成するのです。

もっとも、利用規約は、Webサイトのユーザーにとってもメリットのあるものです。ユーザーは、利用規約を確認することで、そのWebサイトの利用によって自分がどのようなリスクを負う可能性があるのかを、事前に予想することができるからです。

K2利用規約と法律

K2-1利用規約は、どういう時にサイトに掲載しないといけませんか?
また、掲載する義務はありますか?

まず、Webサイトで個人情報を取り扱う場合には、個人情報保護法による規制を受けます。個人情報を収集する際には、利用目的をできる限り特定し、ユーザーの同意をえる必要がありますし、収集した個人情報は、その利用目的に必要な範囲を超えて利用することはできません。一般的には、これらを「プライバシーポリシー」というようにまとめて表示しています。

次に、eコマースなど、インターネット上で商取引をする場合には、特定商品取引法による規制を受けますので、事業者の名称、住所、電話番号など、法が定める事項を表示する義務があります。一般的には、これらを、「特定商取引法に基づく表示」というようにまとめて表示しています。

一般的なWebサイトで掲載の必要があるのは、概ねこの2点で、これら以外の、いわゆる「利用規約」で定められている事項については、前述のとおり、基本的にはWebサイト運営者のためのものですので、掲載すべき法的義務はありません。

K2-2利用規約に書いておけばトラブル防止に役立つことには、どのようなことがありますか?

利用規約に書いておけば役立つことは多くありますが、その中でも最たるものは、禁止規定と、禁止規定に反した場合の措置についての定めです。Webサイトが発展していけば、一定の割合で、これを悪用しようとするユーザーが表れてきます。このようなユーザーに対しては、時には断固たる措置をとらなければ、Webサイトの存続が危ぶまれることになります。

しかし、Webサイトの悪用に対して、利用規約で対策を講じていなければ、運営者は、ケースバイケースで判断しなければなりませんが、これは非常に難しく、コストも小さくありません。そして、判断を誤れば、ユーザーから訴えを提起されたり、悪ければ敗訴してしまうこともあるかもしれません。

他方で、利用規約において、どのような行為を禁止行為とし、禁止行為をしたユーザーに対してどのような罰則があるかを具体的に定めておけば、個々のトラブルはその利用規約にあてはめれば処理できますので、判断に苦しむことは大幅に少なくなりますし、敗訴リスクも大幅に低下します。

以上から考えると、少なくとも利用規約には、自社のWebサービスで生じえる悪用行為について十分な検討をしたうえで、禁止行為を可能な限り詳細かつ具体的に記載しておくことが望ましいといえます。

また、当然ですが、免責条項も極めて重要です。

その他、あまり注目されませんが、専属的合意管轄の定め*2は、実務的には非常に重要です。この定めだけで紛争が終結することもあります。

*2
専属的合意管轄の定めが無かったり、不備があると、遠方の裁判所で訴訟を起こされた場合、交通費や弁護士費用が高額になり、実務上、非常に負担がかかる可能性があります。

このように、利用規約に定めておけば、トラブル回避に役立つことは沢山ありますので、積極的に活用することが望ましいといえます。

K2-3利用規約に書いておいたからといって、法律上は意味のないことには、どのようなことがありますか?

そもそも、利用規約を作成していても、ユーザーがそれに同意していなければ、ユーザーとの間で効力を生じません。利用規約への同意の取得手続きについても、きちんと検証する必要があります。

また、同意を取得したからといって、利用規約に書かれていることがすべてユーザーとの間で効力を有するわけではありません。例えば、利用規約は、あくまでWeb運営者とユーザーとの間の約束ですので、それと関わりのない第三者の義務などを定めても、その第三者を拘束することはできませんし、公序良俗に反するような定めは無効となります(民法90条)。

そして、公序良俗に反するとまではいえないものでも、個人との取引においては、消費者契約法に注意する必要があります。例えば、消費者契約法8条1項1号は、消費者契約において「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」を無効としています。よって、消費者契約にあたるサービスを提供するWebサイトで、利用規約に、「本サービスによって生じた損害に関して、事業者は一切の責任を負いません」などと定めたとしても、これは無効になってしまうのです。

また、民法548条の2第2項により、社会通念に照らして不当な条項は、利用規約に定めてあっても、合意しなかったものとみなされます。

K2-4免責事項は利用規約の一部ですか?

一部です。もっとも、「K2-3」で説明した理由で免責事項が無効となっても、それによって利用規約全体が無効となるわけではありません。

K2-5訪問者(ユーザー)が情報を見るだけのサイトにおける利用規約は、どのような役割を果たしますか?

「登録ユーザーだけに提供するサービス」が無い場合、登録手続きがなければ、同意を取得することもできないので、利用規約等を作成しても、ユーザーを拘束することはできず、あくまで運営者側の「宣言」的な意義を有するにとどまります。

K2-6利用規約が原因で訴訟になった事例にはどのようなものがありますか?

海外の事例ですが、2012年12月21日に、アメリカで、Instagramに対して集団訴訟が提起されました。これは、利用規約の変更により、Instagramがユーザーの投稿写真を勝手に販売したり、広告素材として使ったりしようとしているように見えたからです。

国内でも、大手Webサイトの利用規約は、しばしば変更されていて、通常、ユーザーはそれを受け入れています。しかし、その変更内容があまりにも一方的なものであった場合には、Instagramのように、ユーザーの反発を受け、最終的には裁判にまでエスカレートしてしまいますので、注意が必要です。

K3利用規約の作り方

K3-1利用規約の作成時には、どのようなことに注意したら良いですか?

最も重要なことは、そのWebサイトで、どのようなトラブルが起こりうるかを想定し、それに対する対応策を事前に利用規約に定めておくことです。

通常、Webサイトのビジネスモデルは、少ないリソースで多数のユーザーを相手とすることで利益が生まれるように構築されています。しかし、ユーザーからクレームを受け、またそれが訴訟へとエスカレートしていけば、その対応にかかるコストは、どんどん増大してしまいます。 これに対して、事前に、そのトラブルが起きた場合の処理について利用規約で定めていれば、ユーザーとしても争う余地がなくなり、紛争を未然に防ぐことができます。また、仮に紛争となっても、有利に手続きを進めていけるのです。

このように、利用規約をつくるうえでは、自社Webサイトの特徴を把握して、それに沿った内容を作成していくように気をつける必要があります。

K4利用規約の作成依頼

K4-1他社の利用規約をコピーして使うことはできますか?

利用規約の各条項については、どうしても同じような書きぶりになってしまうことから、原則的に著作権法による保護の対象とはならないものと考えられてきました。他社の利用規約の無断使用が著作権侵害になるかが争われた裁判の判決でも、利用規約の条項ひとつひとつは著作権法による保護の対象とはならないと判断しています。

もっとも、この判決では、同じ事項を複数の条項で繰り返し定めているといった利用規約の「構成」については、個性が表れているとして、著作権法による保護の対象となると判断しました。このため、他社の利用規約を完全にコピーして使用した場合には、著作権侵害となる可能性があります。

この他、法律上問題がなくとも、無断で他社の利用規約を真似たことがわかってウェブサイトが炎上する可能性があります。また、何より、自社サービスに合った利用規約でないために、不都合が生じ、又は思わぬ不利益を被る可能性もあります。

このように、他社の利用規約の一部をコピーして使うことはできますが、自社サービスに合った利用規約を新たに作成する方がより望ましいといえます。

K4-2利用規約の作成をWeb制作会社に依頼することは可能ですか?

利用規約は法的な文書ではありますが、必ずしも法律専門家でなければ作成してはいけないものではありませんので、Web制作会社に依頼することは可能です。

ただし、Webサイトには、これに関わる法律が多数あり、それらの規制を踏まえた利用規約を作成する必要があります。また、Webサイトのユーザーが増えるほど、ユーザーとトラブルが生じる可能性も高くなりますので、トラブルをできるだけ低いコストで解決できるように利用規約そのものを工夫しておく必要があります。これらの作業には、やはり相当程度の法的知識や、紛争解決の経験が必要となりますので、法律専門家が関わって作成することが望ましいといえます。

K4-3利用規約の作成を法律の専門家に依頼するにはどうしたら良いですか?

一般的には、法律専門家へのアクセスとしては、(1)ウェブで検索する、(2)弁護士会や行政機関が主催する法律相談会へ出席する、(3)法テラスへ相談するなどの方法があります。

しかし、利用規約の作成には、一般的な法律知識だけでなく、インターネット特有の問題に対する理解・知識が必要となることがあります。そのような意味では、利用規約の作成経験豊富な法律専門家へ依頼することが望ましいといえます。